惣躰自由

九州では大変な暴風雨ですが、大阪ではそれほどでもありません。雨ニモマケズ、傘を差して、てくてく道場へ。

日曜で雨で夜にもかかわらず、親子で剣道の稽古をしている人たちが何組かいます。こんなご時世ですので、発声は出来ませんが、熱心です。その横で、我々は黙々と居合刀を振ります。

 

近頃、稽古が楽になってきました。手を抜いている訳ではありません。数年前から師匠や兄弟子に指導されていた「力を抜いて」ということが、ようやく自分の体に体現できるようになってきたのかと思っています。私にとって大事なのは「姿勢」でした。

背筋と腰を無理なく伸ばして、肩を落とす。鼠径部を緩める。下腹に重心が掛かるようにする。少し前かがみになるように感じます。顎を少し上げる気持でいたほうが、胸部の筋肉の緊張が軽減するようです。だらっとしているように見えますが、背筋を伸ばすことによって、だらっという感じではなく、ゆるゆるとしている感覚。

自分の動ける速さでゆるゆる動く。力を入れないようにそっと。

斬撃も空間をゆっくり割いていく心持。

こういう動きを心がけると気持よいのです。しかも楽。

 

私淑する宮本武蔵も『五輪書』の中で書いていました。

「かほ、鼻すじは直にして、少しおとがいを出す心なり。…両のかたをさげ、背すじをろくに、尻をださず…」

『五輪書』はとても400年も前に書かれたとは思えないですね。初めて手にしたのは中学生の時でした。当時購入した『五輪書』は徳間書店版。私の名を篆刻した印を押していて昭和59年と書き添えています。1984年。今から36年前。

当時よりも今の私の方が驚くことの多い書物です。武蔵は時代を突き抜けていますね。

 

さて、引用のとおり、武蔵も肩を落として、背筋をまっすぐと言っています。何度も『五輪書』は読んでいるのに、心に響いていないということですね。まあ、理解することと出来ることは違うので、仕方がないということにして。

 

また武蔵は「鍛錬をもつて惣躰自由なれば」勝つことができると言っています。ここで「自由」には「やはらか」と訓じてある写本もあるそうです。

稽古を積んで「惣躰やはらか」になって「自由」になりたいものです。

 

気持よく稽古した後、外へ出ると来た時よりも激しい雨。

 ご厚意に甘えて車で自宅まで送っていただきました。ありがたい。